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P4Memo 要は萌の発露

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小話

2009/05/16(Sat)01:12

性転換ネタ小話その6です。

今回は一足先に梅雨時期のお話。
番長と直斗しか出てきません。

読んでやるぜ!という方は下の『つづきはこちら』からどうぞ^^

 

*****


 ざあざあと雨が降る。
 帰宅途中で突然雨に降られて途方にくれた私は近くの軒先にもぐりこんで雨宿りをしていた。

 ついてない。今日に限って傘を持ってこなかった。
 しみこんだ雨は夏服の制服をしとどに濡らしていて正直肌寒いどころの話ではない。

 凍えそうなほど寒い。
 ぶるりと震える体を自分の腕で抱きしめて、早く雨が上がるようにと祈った。

 このままではカゼをひいてしまいそう。

 私は空を見上げる。
 雨雲はいまだ厚く、当分雨は止みそうにない。

「困ったなぁ」

 連続誘拐殺人事件の件は、巽完二を救出した事でひとまず落ち着いているからいいものの、今後何が起こるか分からない状況である事には変わりなく、体調を崩している暇などないのだ。

 はぁとため息をつく。
 こうなったら菜々子に迎えに来てもらおうかな。

 制服のポケットに手を入れて携帯を握った時、ふいに視界が薄暗くなった。

「・・・きみ」

 顔を上げると、そこにいたのは巽屋で会った男の子だった。

 うつむき気味の頭。
 被った帽子の隙間から見えた表情は感情が乏しくて私は戸惑う。

 何の用なのかと口を開きかけた時、彼が手に持っていた傘を突き出してきた。

「え?」

 意図をうまく汲み上げられなくて、首をかしげていると小さな声で「どうぞ」と言われる。
 そこで初めて彼が傘を貸してくれようとしていることに気がついて私は首を振った。

「あなたが濡れてしまう」
「・・・いえ、僕には帽子がありますから大丈夫です」
「帽子って・・・」

 確かに帽子は多少の雨避けにはなるかもしれないが、傘の代わりにはならないというのに。

「このままカゼをひきたいんですか」

 そっけない物言いの奥に、ほのかに感じる暖かいニュアンス。
 迷った末に、私は彼から傘を受け取った。

「ありがとう」

 お礼を言うと、少年は「いえ・・・」と顔を伏せてしまう。
 照れているのかと思うと微笑ましくて自然と笑みがこぼれた。

「そ、それじゃ・・・」

 そんな私の前から慌てたように彼は背を向けて走り去ってしまった。

「あ・・・」

 想像以上にすばやいその立ち去りっぷりに引き止め忘れてしまう。
 すでにない姿に私は眉を寄せる。

「困ったな」

 傘、どこに返しに行けばいいのか聞くの忘れてしまった・・・。

 借りた傘は色気も何もない、ただのビニール傘。
 愛想も欠片もない態度だったけれど、自分が濡れる事をいとわず傘を貸してくれた彼は優しい人なのだろう。
 そしてたぶん、照れ屋だ。

 先ほどの彼の素振りを思い出して私は思わず笑う。

 事件のことで、何かと気になる少年だけれど、きっと悪い人じゃない。
 私はそう確信して堂島家へと向かう道を歩き始めた。


 雨はまだ止まない。
 けれど先ほどまでの憂鬱な気分はどこかに行ってしまった。

 私はもう一度傘を見上げ、そうして思い出した人を思って、また笑った。



*****

女番長と男直斗話。
今回は梅雨時期のお話。
完二を救出した後です。

甘さもへったくれもない話でしたが少しは楽しんでいただけたでしょうか?(笑)
ちなみにこの時点ではまだ番長は直斗に恋愛感情はない・・・と思う。
だって、直斗の事は中学生ぐらいと思っているから(笑)
可愛い子だなー。ぐらいにしか思っていません・・・よ!

 

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No.67|小話(性転換ネタ)Comment(0)Trackback()

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