以前、リクエストいただいたタイプBの主人公の小話です。
いつも書いている主人公とは性格が異なりますので注意です。
それでは、読んでやるぜ!の方は「つづきはこちら」からどうぞ^^
*****
商店街で、珍しいものをみた。
時刻は景色がオレンジ色に染まる夕方頃。夕飯の買出しに主婦が活動を始める頃だ。
本屋に用があった僕は店頭に並んだ雑誌を眺めていた時にそれを目撃した。
ふと視線を上げた先、そこには長身の男性が低学年の小学生に見える女の子と手をつないで歩いている姿があった。
それは別におかしな光景ではない。おかしくはないのだが、それをしている人に問題があった。
「神凪、先輩・・・」
愕然と、目を見開く。
あの性格が捻じ曲がったあの先輩が、連れの女の子に優しい笑みを浮かべている。
まさかの幼女趣味・・・と思いかけたところで、彼の下宿先の保護者である堂島さんには小学校1年生の女のお子さんがいる事を思い出した。
・・・あぶない。危うく先輩を変態にするところだった。しかもそれを知られたら後が大変なことになる所だった。
あの整った顔で、人形のような笑みを浮かべて何をされるか分かったものではない。
僕はぶるりと体を振るわせた。
それはともかく。
名前は堂島菜々子。
彼女が、そうなのだろう。
時々足立さんから話は聞いていたが、確かに堂島さんに似ず可愛い女の子だ。
驚くのは、それだけではない。
あの先輩の、何の交じりもない純粋な愛情を浮かべた表情をはじめて見た。
誰よりも、何よりも大事なのだと、その眼差しだけで分かるほどに。
少女はそれをなんの躊躇いもなく受け止め、彼と同じように親愛の情を浮かべた笑顔で先輩を見上げている。
手をつないで、二人で楽しそうに何事かを話して、笑って。
あの様子ではきっといつもの皮肉など欠片も出ていないに違いない。
僕は開けっ放しだった口を閉じる。
うらやましいだなんて、思ってたまるかとなぜかそんなことを思う。
無意識に唇をかみ締めていたのを慌てて解いて、同時に頭も振って思考を切り替えようと思った。
もう、彼らに意識を向けるのはやめよう。
彼らと僕は、今は別なのだから。
顔を上げれば、先輩が僕の存在に気が付いたようで目が合った。
すこし心臓がどきりとする。
だが、先輩は彼女に向ける笑みとはまったく違う、いつもの皮肉交じりの表情になるとそのまま笑みを浮かべた。
意味ありげに。
愛情とはかけ離れた、別の感情が篭った目で僕を見る。
そのまま視線をはずされ、彼の視線は再び少女へと戻った。
この上なく優しい、無償の愛を感じさせる笑みを浮かべて。
「・・・・・・うらやましいなんて、思ってたまるか」
握り締めた手に、爪が食い込んで痛みが走ったことなどない事にしようと決めた。
*****
はい。とうわけで、久々のタイプBの主人公でございます。
当初、キャラを作って話を書いたものの、この主人公を受け入れてくれる方はいるんだろうかという思いから筆が進まなくなっていたキャラであります!
作った自分でもこんな主人公ありなのか?と思っていたのもあるんですけどね(笑)
でも、好きなタイプです^^
支持してくださる方もいる事が分かったので、これからは今まで以上に書いていきたいと思います!
それでは、次の小話で会いましょう!
PR