主直で小話!
読んでやるぜ! の方は「つづきはこちら」からどうぞ^^
テーマは11月。
この間も秋で小話を書来ましたが、それとは方向が違うお話ですよー。
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金色の雨が降る。
ぼんやりと霞む視界に降り注ぐ色の美しさ。
日の光がそれを金色に輝かせているのだと気が付いたのは、冷たい風が体を包んだ時だった。
「風邪、ひきますよ」
そうして鼓膜を振るわせる少し低めの声音。
けれど、愛しい少女の声だ。
知れば知るほど心を奪われた、可愛い直斗。
「・・・直斗」
「気が付きました?」
その声は優しくて、俺の髪を撫でる手は暖かい。
「まだ秋とは言っても寒さが厳しくなってきました。こんな所で寝ていると風邪をひいてしまいます」
「うん・・・」
でも、体が動かないんだ。
「体が冷え切っていますよ。いつからこんな所にいたんですか?」
手をさすり、暖かい息を吹きかけられて、それを見ていてなぜか泣きそうになる。
「なんな顔を・・・しないでください」
握られた手に頬が添えられた。
その温もりがさらに感情を高ぶらされて、俺は誤魔化すように空いた方の腕で目元を覆った。
そのまま互いの間に沈黙が落ちる。
ふと、その腕に何かが触れた。
肌の柔らかさとは違うそれに気が付いて腕を見ると、そこには黄色のイチョウの葉が乗っていた。
日の光を浴びて金色に輝いていたそれ。
気が付けば体のあちこちに落ちていて、長いことこの体勢だったことを知らせていた。
直斗に視線を移せば、彼女の帽子にもイチョウの葉が乗っていて思わず笑う。
「? なんですか?」
俺が笑ったからか、直斗がほっとしたように目元を緩めた。
「これ」
手を伸ばし、帽子に乗っていたそれを摘んで彼女に見せる。
「ああ。ついていたんですね」
少し恥ずかしそうに笑う直斗。
その照れた表情が可愛い。
「先輩も、たくさんついてますね。このままだと、埋もれちゃいますよ」
俺の体に落ちていたイチョウを一つ摘んで笑う。
「・・・そうだね。一度埋もれてみたいかも」
「先輩・・・」
「冗談」
眉を寄せた直斗に笑って答えて俺は体を起こした。
「どうせ埋もれるなら、ここがいいや」
そう言って指さした場所。
「へ?」
直斗がきょとんと目を丸くして、次の瞬間には頬を真っ赤にさせた。
「せっ・・・!」
「だめ?」
「う・・・」
彼女はしばらく俺を見つめた後、頬を真っ赤に染めたまま小さくため息を吐く。
「い・・・今だけ、ですよ?」
「ありがとう」
そうして、隣に座った彼女の胸元に顔を寄せた。
柔らかなふくらみ。
そこから聞こえる鼓動が僅かに早い。
それでも、そのぬくもりは優しくて、俺はほっと吐息を零した。
とくん。とくん。とくん。
生きている、音。
命の、音。
ああ。よかった。
直斗は生きている。
当たり前だけど、それがとても嬉しかった。
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11月の後半頃。
いろいろ不安定な主人公とそれを支えたい直斗のお話でしたー。
うーん、次はもっと明るい話を書こう^^;
それでは!
また次回!
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