忍者ブログ

P4Memo

P4Memo 要は萌の発露

[PR]

2025/07/21(Mon)16:04

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

No.|CommentTrackback

小話

2009/01/06(Tue)02:45

性転換ネタ小話。その3。
今回も男直斗登場しないです。ごめんなさい<(_ _)>

今回は堂島家のお話。
きっと菜々子の理想は女主人公だと思うんだな。

*****

 トントントントン。
 同じリズムが室内に響く。

「ねぇ、お姉ちゃん。今日のお味噌汁はなに?」
「今日はね、長ネギと油揚げのお味噌汁だよ。菜々子はネギも油揚げも好き嫌いしないで食べられるかな?」
「だ、だいじょうぶだよ! ななこ、ネギもお揚げも好きだよ!」

 ムキになって声を荒げる菜々子に伊月が小さく笑み浮かべる。
 あいつが死んでから、ずっとコンビニ弁当やカップラーメンばかり食べさせていたからか、菜々子少し偏食気味だ。
 それを知ったからか、伊月はその偏食を治そうとしているらしい。

「うん。そうだね。きっと美味しいお味噌汁だよ」

 満面の笑みで笑いかけると、菜々子がしぶしぶとだが、「うん」と小さく頷いたようだった。そんな菜々子の頭を撫でて、またキッチンへと向き直る伊月はまるで母親のようだ。

 長い髪を一つにまとめ、エプロンを身に着けてそつなく料理を作り上げていく。

 齢17にしてこれほどの手際を身に着けた理由を考えると感心する以上に眉を顰めてしまうが、それ以上に己が娘にしてきた食生活を思うと何も言えずにただ見守る事しか出来ない。

「叔父さん、ご飯もう少し待っていてね」

 ふいに声をかけられてハッと我に返る。
 慌てて「ああ」と返事を返した俺に、伊月は少し首を傾げた。

「ごめん。お腹空いたよね」
「いや、大丈夫だ」
「そう?」

 どうやら口数が少ないのを空腹で仕方がないからと思ったらしい。

 コトコトと聞こえてくる鍋の音。
 そこから香る醤油の匂いにそそられてもいるので当たらずも遠からずだが。

 やがて食卓に並んだ夕食は唾液が溢れそうなほどうまそうな出来栄え。

「煮物はもっと早くから作りたいんだけどね」

 がつがつと食事を始めた俺と、苦手な野菜も美味しそうに口に運ぶ菜々子を見て微笑んだ伊月がポツリとこぼす。

「早く作ると何か変わるのか?」
「一度冷やしてからまた煮込むと中までしっかり味がしみ込むんだよ。学校から帰ってきてからだと、冷やす時間がないから」
「でもっ、このお芋中まで美味しいよ!」
「・・・それなら良かった」

 菜々子の言葉に伊月はほっと息を着き、ようやく自分も箸を持った。

「お姉ちゃん、今日一緒にお風呂入ろうよ」
「いいよ。髪の毛洗ってあげるね」
「やったー! 菜々子、お姉ちゃんに頭洗ってもらうの好き! お風呂から出た後に髪の毛乾かしてくれるのも大好きっ!」
「ほんと? 良かった」
「お姉ちゃんの髪の毛は菜々子が乾かしてもいい?」
「もちろん。お願いするね」
「うんっ!」

 花が咲いたようににこにこと話をする二人。
 自然と頬が緩んだ。

 この光景は伊月が作り上げたもの。
 こいつがいたから菜々子があんな風に笑っている。
 冷え切ったこの家を、温もりに満ちた家に変えてくれた。いや、戻してくれた。
 伊月には本当に、感謝の言葉だけでは足りないくらいだ。

 何をするにも伊月の後にくっついて歩く菜々子の姿を見て思うのは、こいつが今、この家の母親代わりを勤めているんだろう、という事。
 それは分かってはいるが。


「ねぇ、お父さん」

 伊月が部屋まで着替えを取りにいった時、菜々子が妙に真面目な顔をして俺の目の前に座った。
 なんだ?と先を促すと、

「菜々子、お姉ちゃんがお母さんになって欲しい」

 まさかの言葉にぶっと口に含んだお茶を噴出した。
 冗談ではない、真摯な瞳に汗が滲む。

 菜々子・・・。さすがにそれは無理だ。

 血が近いからという理由を説明して、果たして納得してくれるのか。

「菜々子。私は叔父さんのお嫁さんになれないよ」

 いつの間に戻ってきたのか、伊月がクスクスと笑みを零しながら言う。

「叔父さんはね、菜々子のお母さんが大好きだから、他のお嫁さんはいらないんだよ」
「い、伊月!」

 とんでもない事を言い出しやがった!

「・・・そうなの?」

 つぶらな瞳がこちらを見上げる。
 さっき以上に思考が働かない。
 なんだか顔が熱い気がするのは気のせいか。

「叔父さん、ちゃんと言ってあげて」

 そっと囁かれた声。
 それに体の硬直が解け、思考が動き出した。

 そうか。これは、必要なことか。

 伊月の目を見て思う。
 微笑を湛え、静かな感情が浮かぶその色。

 また、背中を押されてしまった。

 俺は一つ息を吐く。
 菜々子の目をしっかりと見てはっきりと言い切った。

「そうだ。俺の嫁は千里だけだ。菜々子の母親も、な」

 次の瞬間、菜々子の表情が嬉しげに綻ぶ。
 それを見て、俺もまた心から安堵のため息を吐いた。

「じゃ、お姉ちゃんをお嫁さんにしてってもう言わないね!」
「ああ・・・」

 頷いて、菜々子に笑いかける。
 千里を今も想っていると、口にしなくても分かってくれていることだと勝手に思っていた。
 けれど、こうして喜ぶ菜々子を見て改めて知る。
 口に出して伝えることの大切さを。

 まったく、親と子ほどの年の差のある子供にそれを教えられるとは、俺もまだまだだな。



*****

堂島父娘と主人公の巻。

叔父と姪が結婚できない理由は大きくなれば分かると思うので、あえて血を理由にしなかったのでした。
なんかちょっと中途半端で申し訳ないです^^;

PR

No.29|小話(性転換ネタ)Comment(0)Trackback()

Comment

Comment Write
Name
Title
Mail
URL

Pass Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 

Trackback

URL :