今週末には完結させたいと言っていた先週末。
すみません。まだ書き終わっていません!
ということで、お詫び小話を書きました。
性転換ではない主直です。
相変わらず短いお話ですが、読んでやるぜという方は『つづきはこちら』からどうぞ。
*****
吐き出す息が白く、空気に混じりやがて空中に消えてゆく。
12月の稲羽市はひどく寒い。
すでに雪が降り始め、町中が白一色になっていた。
静寂に包まれた世界。
しんしんと降り積もる雪の音も聞こえてきそうだ。
直斗は誰もいないこの場所で目を瞑る。
帽子や肩に雪が降り注ぐのも構わなかった。
ただ、雪の気配を感じたかった。
どれぐらいそうしていたのか、遠くからさくりさくりと雪を踏む音が聞こえてくる。
少しずつ近くなる足音。
きっと彼だと思ったから、直斗は瞼を開くことなくその場に佇み続けた。
「風邪をひくよ」
やがて足を止めたその人の優しい声が耳に届く。
そこで初めて、直斗はうっすらと目を開いた。
「なにをしていたの?」
「・・・なにをしていたんでしょうか、僕は」
小さく笑う。
明確な理由はなかった。
そんな直斗をきょとんと見つめた樹だったが、彼もまた小さく笑って彼女の頬を両手で包む。
「ほっぺた、冷たいね」
「・・・先輩の手は、暖かいですね」
じんわりと沁みこむぬくもりが心地よくて直斗は再び瞼を落とした。
「あんまり、無防備でいたらダメだよ」
小さく呟かれて、何の事だろうと目を開くと目の前には樹の顔があって、驚くまもなく軽く口付けられる。
「!」
目をまん丸に見開いた直斗が悲鳴や非難の声を上げる前に樹は彼女を抱きしめてしまう。
180センチ近く身長がある彼に152センチの直斗が抱きしめられると、まさしく包み込まれてしまって声を発する事が出来なかった。
「・・・ずるいです・・・・・・」
もごもごと彼の胸で言えば、樹は肩を震わせて笑う。
その背にそっと腕を回す。
すると少し力が込められた。
「早くあったまりますように」
帽子に頬を摺り寄せて彼が囁く。
直斗は強く抱きしめられる息苦しさとは違う、息苦しさに目を細めた。
彼の優しさに胸が締め付けられるのはこれで何度目だろう。
愛しさで胸がいっぱいで、溢れそうになる。
好きだと思う気持ちが、こんなにも無限なものだったなんて知らなかった。
苦しくて苦しくて。
でも、愛しくて。
涙が、溢れた。
*****
こういう感覚的な話を書くのがけっこう好きです。
主直愛してる!
PR