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2025/05/13(Tue)19:26
P4Memo 要は萌の発露
2025/05/13(Tue)19:26
2010/05/04(Tue)02:39
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この季節になると、思い出す。
新しい出会いを。
すべての始まりを。
桜の花は今が盛りと花開き、風にあおられその身を散らしていた。
そのはかなくも美しい景色に足を止めて見入っていたのを思い出す。
今年もまたその季節が来たのだと、都会の只中にありながら思う。
新しい季節。
一年ぶりに戻ってきた場所。
けれど、みんなはいない。
物理的な距離はあっても心の距離はないと分かっていても、やはり寂しいもので、思わずため息を吐いてしまった。
そんな自分に苦笑をする。
まだ離れてたった20日ばかり。
今からこれでは先が思いやられる。
「頑張らないといけないのにな」
寂しさを首を振ることで紛らわせ、一年前まで通っていた高校へと足を向けた。
「神凪! 久しぶりだな!」
「帰ってきたのか!」
「会いたかったよ!」
自分の顔を見て喜ぶ旧友たちに、笑顔で答える。
こうして、一年も経っても忘れずに受け入れてくれることを素直に嬉しいと思った。
「俺のこと忘れてなかったんだ」
「あったりまえだろ! お前を忘れる奴がいたら逆にすげーよ」
「なんだよ、それ」
大げさな言葉に思わず笑う。
「いやいやマジだって。お前がいなくなってから女子どもが陰気くさくてしょうがなかったぜ」
「そう? 本当だったら男冥利につきる、ってやつ?」
笑って返せば「本当なのに」なんて愚痴る友人に、やはり俺は苦笑した。
「それにしても、少し雰囲気変わった?」
「そう?」
「なんか・・・大人っぽくなった?」
「だよなー。俺もそう思った。・・・・・・はっ! まさかお前! 一足先に大人の階段を昇ったかーっ!! この裏切り者めっ!」
肩を掴まれガクガクと揺すられる。
確かに、彼女は出来たしそれなりにいい雰囲気になったりしたけれど、実際にそれって効果があるのか?
「もっと、違うところで大人っぽくなったと言ってくれた方が嬉しいんだけど」
「否定しねぇよ、この野郎!」
「まぁまぁ、落ち着けって。・・・・・・こいつのことは放っておくことにして。マジでさ、お前変わったんじゃね?」
「そう、かな?」
「転校先って田舎だったんだろ? 何もなかったんじゃないの?」
その言葉に、笑う。
「確かに、何もなかった。でも・・・」
でも、ここで見失っていたものが向こうにはたくさんあった。
「大事なものは、たくさんあったよ」
そう。たくさんあった。
何気ない日常がどれほどかけがえのないものであったのか。
人とのふれあい。繋がり。
見失いそうだった自分と向き合い、何が大切なのかを知って。
譲れないもの、譲ってはいけないもの、忘れてはいけないもの、見失ってはいけないもの、しっかりと手を取っておかなければいけないもの。それと同時に、許すこと、受け入れることの難しさを知った。
普通の高校生では体験できない事を経験してきたのだ。
少しくらい成長していないと。
「ふ~ん」
意味ありげに見つめられて、少し戸惑う。
自分でも多少変わったような気はするが、そこまでまじまじと見られるほどなのだろうか。
「良かったじゃん」
しみじみと、けれどにっこりと笑った友人に俺は目を瞬いた。けれど、次の瞬間には笑って頷いた。
「ああ」
もしかしたら、自分が気が付かなかっただけで、ここにも大切なものがあったのかもしれない。
からかう訳でもなく、受け止めてくれた友人を前に思う。
こうして気が付くきっかけをくれたのはやはり稲羽での経験だろう。
これからも見えなかった所がもっと見えてくるのかもしれない。
今、こうした瞬間も大事に過ごそう。
俺は改めてこの新しい生活への未来を馳せたのだった。
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都会に戻ってきた主人公の新学期でした。
『彼女』はお好きなキャラを当てはめてくださいな^^
私的には直斗ですがっ!(笑)
それではーまた次回!
No.142|小話|Comment(0)|Trackback()
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