珍しくタイトルを思いつきました(笑)
主直小話でございます。
直斗視点。
読んでやるぜ!の方は『つづきはこちら』からどうぞ^^
『ニブイヒト』
*****
僕たちは、付き合っている。はず。
どこかに行くのに付き合っているとかそういうことではなく、お互いが・・・その・・・す、好き、合っていて、つまりは・・・こ・・・こ、恋、人同士であるはずなのだ。
ちらりと、僕は彼・神凪樹を見上げる。
特別こちらを気にしたそぶりもなく、前を向いたままの、その人。
視線に気がついてこちらを振り向いた彼と目が合ってしまい僕は恥ずかしくなって顔を伏せた。
小さく笑われて、さらに頬が熱くなる。
けれど、先輩はそのまままた前を向いてしまう。
それがなんだか面白くない。
だけど僕はそれを彼に言う事ができない。
ふと、歩く足にあわせて揺れる手が視界に入った。
僕よりも大きくて力強い手。
重い武器を易々と振り、シャドウたちを容易く倒すその腕。
広い肩。背中。
僕が憧れる、僕が欲していたものを持つ人。
その手に、触れたい。
ぎゅっと握り返して、引っ張って欲しい。
さっきからずっとそう願っているのに、彼はいっこうに気がついてくれない。
さりげなく近づいても、偶然を装って手をぶつけても、だ。
鈍い。
鈍いにもほどがある。
仮にも、付き合っているというなら、それ位するのが普通ではないのか。
なのに先輩はそんなそぶりもなく僕の隣を歩くばかり。
少し歩く速度を落として、その背をじっと見つめれば気がついてくれるだろうか。
僕の欲しいものを。
実践をしようと速度を落とす。
が、いっこうに距離がひらかない。
なぜだろうと考えて、はっと気がついた。
もしかして、僕の歩く速度にあわせて歩いてくれているのだろうか。
じわじわと、嬉しさが浮かんでくる。
僕ために。
僕の事を考えて。
そう考えると頬が熱くなってきた。
手を、繋げなくてもいいかもしれない。
さりげない先輩の優しさが嬉しくて僕は自然と笑みが浮かんだ。
鈍い人。
でも、優しい人。
僕の、好きな人。
そんな先輩が、僕が笑ったのを見て笑みを浮かべたのを、俯いていた僕は知らない。
*****
めずらしく直斗がもやもやしている話。
いくら恥ずかしがり屋で奥手でも、きっとこういう欲求はあるんじゃないかなーと思ったり。
もしかしたら番長視点もあるかもしれない(笑)
PR